我が国のウォーターマン文化を求める旅
OMEGAサバニ帆走レース
写真:谷尚樹 文:荒木汰久治
沖縄の糸満が発祥の地とされる小型漁船"サバニ"。年間を通じて海と身近に接してきた海洋漁民"海中(ウミンチュウ)"の誇りである。サバニの原型ともいえる船は14世紀から16世紀中期まで遡ることができるという。当時、琉球王国の人々は東シナ海を自由に行き来し、朝鮮はもとより、遠くはシャム王国やジャワと交易していた。紀元前3500年頃には、中国南東部を起源とする民族が、台湾、沖縄地方、そして遥かポリネシア圏の大海原に旅立っていったことを考えると、つい30年前ほど前まで沖縄周辺の外洋に繰り出していた琉球の海の民に、我が国日本におけるウォーターマン像を重ね見てしまい興奮の意を抑えられなかった。
サバニは、サンゴ礁に囲まれた沖縄独特の地形にあわせて、エークと呼ばれるパドルが舵の役目を果たす。もともとそのエークを漕ぎ進んでいたのだが、遠い漁場へ、そして座間味や渡嘉敷などの離島から那覇まで新鮮な魚や西瓜を運ぶ為、「より遠く。そして速く」進む為にセイリングをはじめたのだ。船の構造は船底部分が頑強そして重層にできており、外洋の波にサーフィングし易くできている。自らの力でパドルし、風と波という自然の力を利用する船。ここでもウォーターマンスタイルは形としてしっかりと受け継がれていた。
透き通った深青の海と白い砂浜。座間味島から那覇まで約20マイル(32キロ)のレース。先祖を思い敬う海へ向かって祈り一斉に海に漕ぎ出した。6時間12分。カーチーベー(夏至南風)を帆に受け6人のクルーはパドルを合わした。
壮大な海の恩恵を受け遠い祖先から受け継いだ伝統と歴史を身を持って体験し、あらためて自分の小ささを痛感し自然に対して敬意を払った。現代社会で忘れかけられた人間として大切な生き方を思い出させてくれるサバニ。我々の祖先から伝わった太古から未来へ生きる希望を繋ぐ船だということ。このレースを実現した世界的なヨットカメラマン添畑薫さんの言葉がとても印象的だった。「世界に誇れる海洋民族、海人。そしてサバニ。日本人として誇りを持とうぜ。荒木!」
"スポーツは文化"「現代人が海に入る機会をもっと増やす為にできることは、その具体的な道具を増やし環境を提供する事。」そして「普段波から受けている恩恵に感謝し、水辺だけでなくもっと広大な海全体に我々の活動の場を求め、自然の偉大さに皆と共に触れたい。」という支援者スウォッチグループジャパンオメガ事業部の情熱。それは『楽しいから海が好き。』といった人間本来の素直な気持ちなのではないか。